自転車の重量について
2006/5/13
2015/3/28 更新


(2015/3/28
)
レイアウト変更、
追記など
  他のページでも述べていますが、web環境の変化でブラウザにによりレイアウトが崩れてしまっている場合がありましたので、レイアウトを変更、更新しました。
  また、末尾に「・・・材質のことなど後日にアップしたいと思います」と書いていますが、材質については、自転車の素材とレシピにアップしております。

軽快車は
重いほうが良い?
  一般的な軽快車(ママチャリ)のことですが、自転車は重いものを選びましょう、と言ったら随分変なことを言うと思われるでしょう。しかし、ある意味当っている面も少なくないのです。
  製品のコストを抑えるのにもっとも手っ取り早い方法は、材料を少なく、つまり軽くすることです。自転車で言えば、フレームのパイプを薄くすれば、それだけ材料の鉄を少なくできます。タイヤも薄くすればゴムを減らせます。前カゴの網目はできる限り薄く細くしたほうが材料が減ります。そんな積み重ねでコストダウンした場合、材料が少なくなるので、当然軽くなるわけです。
  「持って軽い、乗って軽い」は、いい自転車の基本でした。それなら、上のような軽い自転車はいい自転車なのか、と言うとそうでもないと言えます。フレームのパイプを薄くして軽くする方法は、確かにスポーツバイクでよくとられる方法です。これは、強度のある材料を使って、薄くしても強度低下をさせないように設計されているのです。強度のある材料は、コストも高い上、薄くしたパイプを加工するには製造技術も要求されます。しかし、材料はそのままで、薄くしてしまうと単に強度が低下するだけです。タイヤのチューブひとつとっても、細いタイヤのロードに使うのではないかと思うような、びっくりするくらい細いチューブが入っている軽快車があります。ゴムですから空気を入れれば膨らみます。タイヤに空気を入れることはできますが、細いチューブを無理に膨らませるので、適正な空気が入った後は、風船のごとく大変薄くなっています。当然パンクもしやすくなります。これなんかは外から見ても、なかなか分かりません。薄いあるいは細い線材を使った前カゴは軽いですが、その分外力に弱くなります。カゴに入れたバッグの角に当って、膨らんでしまったり、駐輪場でガチャガチャと隣の自転車と接触して、早晩悲しいくらいに変形することでしょう。 また、ちょっといい軽快車になると、暗くなると自動で点灯するライトや、後ハブ(車輪軸)に内装変速機を備えたものも多くなります。このように便利な装備が重量を上げていることもあります。廉価な自転車には、このような装備も付いていることが少ないようです。

スポーツバイクは
どうなのか?
  しかし、スポーツバイクは軽いのを求めるではないか。確かにそのとおりです。スポーツバイクではランクが上がるほど軽くなります。フレームのパイプを薄くすれば…ということを述べましたが、ある程度、たとえば鉄の場合パイプの厚みが1.2mmくらいまでは普通の技術で薄くできますが、1mm以下さらにコンマ何ミリともなると、製造技術が要求されます。普通に作ってできないことは無いですが、できてみればパイプ表面はベコベコ、これでは商品価値もありません。第一、普通の材料でこんなに薄いパイプを使っても、実用に耐えるフレームはできません。軽いフレームは、パイプが薄いだけでなく、溶接部分など強度が要求される部分だけ少し厚くして、パイプの中間部分を薄くした、バテッドチューブというものを使って、さらに強度と軽量化のバランスが考慮されます。もちろんこのような加工をしたパイプは、薄いだけでなく、バテッドという加工も必要になり、それだけコストも上がってきます。(チューブという言葉を使いましたが、フレームのパイプ部分は、チューブと言った方が専門的なようです。英語圏でもチューブというほうが通じます)
  また、フレームの材質も、薄くても普通の鉄以上に強度のある合金鋼、あるいはアルミ合金、チタン合金、カーボンファイバーなど軽量で強度のある材料が使われるのです。合金鋼とは、鉄にほんの少しだけマンガンやクローム、モリブデンなどを含有を多くしたものです。普通の鉄は炭素鋼と呼ばれるだけあって、炭素を含みます。その他、マンガンやリン、硫黄をほんの少し含みます。マンガンの量が少し多いのがハイテンで、一般的な鉄には含まれないクロームとモリブデンを含んだのがその名の通りクロモリです。ほんの少しなのですが、混ぜることにより飛躍的に強度がアップします。強度のあるパイプは、切断加工するだけでも技術が要求されますし、溶接でせっかくの強度が低下しないように温度管理や溶接技術も要求されるのです。
  また、フレームだけでなく、各部品もアルミを主に材料とした軽い部品が使用されます。アルミというと曲がりやすい1円玉を連想しますが、これもほんの少しだけ異種金属を混ぜることで、アルミ合金となり飛躍的に強度アップします。アルミ合金にも色々な種類があり、高級な部品ほど高強度なアルミが使われ、さらに軽量な部品になります。
  スポーツバイクは、速く気持ちよく走ることも大きなポイントです。したがってコストをかけてでもより軽量で強度のある設計がなされているのです。しかしながら、どうしてもスタンドやドロヨケ、キャリア(荷物台)などは、一般の軽快車のそれと比べると相対的に強度がありません。日常のラフな用途をあまり考慮していませんし、それらを考慮すると、どうしても重量を犠牲にしなければなりません。ドロヨケに使われている、ポリカーボネート樹脂は、エンジニアリングプラスチックの一種で、屈曲などに強い材質なのですが、しっかりとした厚みのある鉄やステンレスのドロヨケと比べるとどうしても弱いです。アルミ合金製のフロントキャリアは、軽快車の前カゴのように、お買い物の食料品や、重い通学カバンを載せることは、あんまり考慮していません。
  ロードではクロスバイクのように気軽にスポーツライドするのは難しいですが、速く走るには向いています。MTBではクロスバイクレベルまでは軽快に走れないかもしれませんが、オフロードでは絶対的な走破性があります。また軽快車は、すべてのスポーツ車と比べて、軽快に、速く走ることはできないかもしれませんが、普段着で少々の荷物も、水たまりも気にせず本当に気楽に乗れます。やはり乗り方によって自転車の向き不向きがあり、設計もそのようになっているのです。

もう一度軽快車について
考えてみます
  違った方向へ行きましたので、元に戻します。
  以前、軽快車を扱っていたことがありました。その当時は、フレームのパイプひとつとっても、曲がったパイプのフレームの下パイプには、普通の鉄ですが肉厚のあるバテッドチューブを使いました。ベルドライブなどは、チェーンステー(ギヤクランクと後車輪軸を結ぶ部分のパイプ)にベルトのギヤクランクをを当らないようにするため、、大きな凹みつけなければなりません。それに大きな駆動力がかかるので、特に肉の厚いものを使いました。ドロヨケなども、凹みにくいように厚みが増えてきます。色々な市場の声から、色々な箇所の強度が上がって行き、重量は増していきました。これらは当社に限らず、他のメーカーさんも同様であったと思います。
  現在の廉価な軽快車を見ていると、この辺が軽く作られているように思うのです。もちろん乗ってすぐに壊れたりするとは断言しませんが、変形しやすく寿命が短いものも多いのではないかなと思ったりします。
  ですから、軽快車は重いものを、というのがひとつの目安になると思います。ただし、軽快車の中には、フレームや各部品にアルミ合金などを採用して、軽量化をポイントにしたものもあります。こちらは軽さがウリですから、上に述べたことは当てはまりません。また、廉価な自転車でも内装変速や自動点灯ライトを装備したものがあります。これらと、しっかりした作りの変速・自動点灯のないものを重量で比べてもあまり意味がありません。ひょっとしたら変速付廉価軽快車と、変速無のちょっといい軽快車とを比べると、重量も価格も同じかも知れないというヘンな現象もあります。重量であくまで目安であるとご理解ください。詳しくは専門店さんでお聞きいただくと、説明してもらえると思いますよ。

スポーツバイクの重量も
もう一度考えます
  スポーツバイクは、軽さがひとつのポイントですから、カタログの仕様にも重量がかかれていたりして、カタログを見て比較するのも楽しいことです。しかしカタログに記載されている重量は、実際には多少前後するのが普通です。
  自転車は、数多くの部品から構成されます。すべての部品で、生産時期によって多少重量が変りますし、それらの積み重ねで完成品としての重量が前後してきます。
  たとえば、フレームやリムなどは、ストレートなパイプ材料が原材料となることが多いです。パイプは、生産するときの原材料や、金型によって出来上がりの重量が変ってきます。生産時期によってあまりにも重量が異なりますと問題ですから、供給側と受け入れ側で、たとえば1メートルあたりの重量の許容値を取り交わしています。一定のサイズのパイプなどではJIS(日本工業規格)でも決められています。前述しましたように、軽いほうが材料が少なくすみ少しでもコストが抑えられます。したがって供給側としては、範囲内で少しでも軽いものにしたいですし、受け入れ側では規定外に軽いものではないかと、チェックが厳しくなります。部品などでカタログに重量が記載されていたりしますが、記載重量より軽いほうがいいみたいですが、実際には重いほうが得な場合もあるのです。リムではブレーキの当りで側面が磨耗していきます。そのことを考えると重いほうがアタリかもしれません。
  それら、フレームあるいは色々な部品での積み重ねで、完成車重量は前後する場合があるのですが、やはり気持ち的には、少しでも軽いほうがいいですね。なお、基本重量というのは、一般に走れる状態での重量です。走行するときには、絶対に装着すべきのものですが、リフレクターやベル、あるいはドロヨケ・キャリアなどははずされています。分かりにくい表記なのですが、自転車本来の重量を知る目安になります。総重量とは自転車に標準装備されたものを含んでの重量になります。
  まだ、アルミフレームが一般的になる前は、スポーツ車の重量として、10kgを切るものは相当な軽量とされていたことがあります。普通に使うには軽すぎて、強度的に不安であるとも言われました。しかし、最近ではロードバイクを中心に、9kg台は当たり前、8kg台、7kg台のロードバイクも一般に市販されています。これらは、軽量なアルミあるいはカーボンフレーム、そして高強度で軽量な材料・製造技術が確立して達成するようになったのです。たとえば当時のクロモリフレームでは、フレーム単体で2kg以下のものは非常に少なく、あったとしても特に体重の軽いライダー専用という条件もありました。今では、アルミフレームの単体で普通に1kg台後半、1kg台前半、あるいは1kg前後というのも珍しくなくなりました。
  最近は、軽量化がさらに進み、競技の世界でも重量の最低基準を設けることにもいたりました。それだけ凄く軽く、指先で持ち上がるようなマシンが現存します。やはり軽いマシンは今でも扱うのにデリケートにならざるを得ないのは変らないのですが、デリケートにならざるを得ない基準は確実に下がりました。以前は夢のようだった9kgのロードも今では十分な実用レベルです。さすがに6kg台ともなれば、神経も使いますし、その前にちょっと手を出しにくい価格になります。それでもこんな軽量なマシンは、夢どころか、実現は不可能と思われていたこともありました。
  ただし、供給する側としては、最終的なお客様の顔が完全に見えないため、どうしても及び腰ならざるを得ません。最大公約数的な強度を考えると、あまり冒険的な軽量化ができないのが現実です。ときおり許容体重はどのくらいまでなのかというご質問も受けるのですが、体重だけでなく、扱い方もあります。一概にココまでと言えない難しいところがあります。いずれにしても、自転車という自重にそれより何倍(あるいは10倍以上)の乗員を乗せて、あるときは乗員の全力のパワーを受け、伝達する自転車に、あくなき軽量化を求められる現実は難しいものがあるとも思います。
  軽快車からはじまってスポーツ車の重量の相反するところを考えていますと、とりとめの無い内容になってしまい恐縮です。前述の許容重量や、材質のことなど後日にアップしたいと思います。